Column

内海 政嘉

任せることによる落とし穴

数年前の出来事です。

ある会社の経営者が、若い頃から懸命に努力してきた社員の方にお店を任せたいと思い、その方に店舗の運営を一任しました。
それからしばらくは業績もよく、さらにその人を信用していたこともあり、経営者はそのお店にかかわることがほとんどありませんでした。

ところが、最近になって問題が起こり始めたのです。
長年好調だったお店の業績が徐々に悪化。お店の状態を調べてみると、もはや「会社のお店」ではなく「店長のお店」に変わってしまっていたのです。
お店の社員は誰一人店長に異見を言えず、店長の言うとおりに従い、自発性もなく、驚くほど育っていませんでした。

このような状態では業績も悪化してゆくはずです。

人を信じ一つの職場を任せることは、やる気高め、人を育てるうえでも大切なことは言うまでもありません。
ただし留意すべきことは、任せきることはいつの間にかその人を増長させ、組織運営や部下の考え方や行動に大きな弊害をもたらすといった落とし穴があるということです。
信じているから、信頼しているからといってその職場をまったく任せきることは、結果としては経営者不在の状況をつくってしまいます。

ここで大切なことは、任せたからこそきちっと報告を聞いたり、ときにはお店や工場といった現場に出向いたり、常に組織の現状を正しく把握することです。
それがたとえ信頼できる人物であったとしても同様です。

また、日頃から経営者としての考えや方針を伝えたり、当人からの考えや意見に耳を傾けたりといったコミュニケーションも欠かせません。

任せたからといって安心することがないよう心がけましょう。

この記事に対するご質問・お問い合わせはこちら
株式会社クリエイション
兵庫県神戸市中央区多聞通4丁目4-13
078-371-8801
お問い合わせ・資料請求