コラム
Column
内海 政嘉「対話の場」とコミュニケーションとは異なる(第1回)
先日、ある経営者からご相談を受けたときのことです。
相談内容は、「会社の売上低下に歯止めがかからず、この状況が続けば経営の悪化は免れない。」「この状況を打破するために、全部門対象に改革に取り組んでいるが、社員に積極性が見受けられない。」「何をやってもまとまりがなく行動がバラバラである。」「どうすれば改革に向けての活動を活発にし、成果に結びつけることができるか。」といったことでした。
私は、話の詳細を聞き遂げた後、すかさず「対話の場」を職場に設けるようにとアドバイスをしました。
そのことで、改革に向けた社員のモチベーションが高まり、主体的な行動に変わってくること、また、改革への取り組みに対し互いが協力し合えるようになり、一体感が高まってくることを説明しました。
すると、その経営者は、「ウチは結構コミュニケーションをとっている。会議もやっているし、お互いに連絡も取りあっている。上司と部下の間でもよく話をし、それでもうまくゆかない」といったことを話されました。
後日、幾つかの会議に出てみると、部門長が1時間ぐらいかけて現状や課題などについて報告をしますが、他の部門長はひたすらうつむき加減で聞いているだけであり、他の会議も似たようなものでした。
また、朝礼がコミュニケーションの場になっていると聞き参加してみましたが、今日の仕事についての連絡や当番の人が話をし、他の人は黙って聞いているだけといったものでした。
上司と部下の日頃のコミュニケーションといっても、ほとんどが上司からの一方的な話や仕事の指示ばかりでした。
「対話の場」とは、本音での意見交換により、お互いの
- 考え
- なぜそう思うか
- 感情を伝える
ことにより、理解し合える枠組みを言います。
報告や表面的な話し合いだけの会議、朝礼での連絡、一方的な指示や場当たり的な話し合いといったコミュニケーションとは本質的に異なるものです。
自分の職場や会社でのコミュニケーションが、「対話の場」と言えるかどうかを今、一度見直すことで、人や組織は自立に向け大きく変化し始めるはずです。