コラム
Column
内海 政嘉「対話の場」の重要性
「目的」を伝えることでやる気のなさが一転、驚くべき変化へ
顧客企業において「ムダ取り改善」による原価低減に取り組むことになりました。改善活動として、品質、コスト、生産性の改善には取り組んでいたのですが、さらに一層のコストダウンが避けられない状況になったからです。
ムダ取り改善は、この顧客企業にとって初めての取り組みであったため、私はムダの見つけ方や取り組み方を指南するため、マネージャーや職場のリーダーたちと一緒に現場を回り、ムダを見つけ、その改善策を検討し始めました。
しかし、改善がなかなか進みませんでした。マネージャーや部長は、「ちゃんとリーダーに話しているのですが」と言うだけで、何の解決にもなりませんでした。
あるとき、新任のリーダーから、「ムダ取りとは何ですか?」、「記録を取ればかり言われて、上の人は何をしているのかよくわかりません」、「何のためにこんなことをするのですか」といった声を聞かされました。
私は、この状況に愕然としました。上司は経験のない新任リーダーに対し、ムダ取りをやるぞと言っただけで、伝えているつもりになっていたのです。ムダ取りとは何か。取引先からの従来にない大幅なコストダウン要望や、原材料費の高騰などにより、ムダ取り改善が避けられない収益状況にあるといった、何のために自分たちはムダ取りをするのかといった「目的」が伝えられていなかったのです。
そこで、私はリーダーたちに、この活動の目的についてしっかりと話をしました。
そのうえで、リーダーの役割や重要性についても伝えました。これを機会に、まるで人が変わったように、自分たちが率先して、やる気と責任感を持って取り組むようになりました。
特に会社や職場で、今までに経験のない新たな取り組みや方策を実施する場合は、その「目的」を職場責任者であるリーダーにしっかり伝えることです。目的を理解することで、リーダーとしての役割やその重要性にやりがいを感じ、主体的な行動に変わるのです。