政府は11日、従業員50人以上の事業所に対して、メンタルヘルスの検査を義務付ける労働安全衛生法改正案を閣議決定致しました(2014/3/11、日本経済新聞より抜粋)。
50名以上の事業所すべてが対象となる見込みで、法案が成立すると年1回の従業員全員のストレスの状況をチェック、また必要に応じて配置転換や勤務時間の短縮が義務付けられます。
精神面の問題は、非常に繊細で気付いたときにはすでに手遅れということも多く、先日もある会社から「精神疾患(うつ病)で休職している社員から復職願いが出されたが、認めたくないのですが大丈夫でしょうか?」という、お尋ねがありました。
そこで今回は、「精神疾患(うつ病)で休職中の社員から復職願いが出されたら?」会社としてどのような対応をすればよいのか考えてみたいと思います。
そして、病気やケガが治って就業可能という状態になれば、「復職」させることになり、病気等が治らない場合は、休職期間満了で「自然退職」となります。
そこで、よくトラブルとなるのが「治った」という基準についてですが、裁判所は「復職する条件は以前の業務ができるようになっているかどうか」であるとしています。
さらには、復職の可能性の立証責任は、復職を求める社員側にあり、これを証明しなければ、復職はできないということなのです。
そして、この立証は「復職可能」という診断書があるだけでは足りず、復職となる条件を満たしたことにはならないとしています。
特に、社員の主治医は会社の仕事をよくわかっていないのが現実ですから、この見解を鵜呑みにすることは避けるべきですが、社員としてはこのような診断書をもらう以外に立証する手立ても無く、会社としてもどう判断すべきか困ってしまいます。
そこで、会社はどのように対処すべきかを考えますと、まずは復職を希望する社員に対し、就業規則に記載した復職判断のプロセスを伝えます。
ここで「いきなり復帰は難しいが、回復はしている」ということであれば、トライアル出勤とし、経過観察をすることも1つの方法ですが、継続して実施していただきたいことは、医師から状況報告書を定期的に提出してもらい、会社が復職を判断するのです。
復職させるのか、雇用契約を終了させるのかに関する検証は「複数の目」を持って判断することが大切なことで、復職について主治医の診断を尊重しつつも、疑わしい部分については徹底的に検証する姿勢が必要です。
さらに、復職希望者に対して「前の職場へ復帰させなければならない」と考えられがちでしたが、裁判所の判断では「復職は社員の属性の中で考えるべきである」とされており、「復職 = 休職前の職種」でなくてもよいと考えられております。
逆に言うと、休職前に専門職であった社員に対して「専門職での復職は厳しいので、一般職の仕事をしてもらう」ということは考える必要がなく、この場合は雇用契約終了で退職としても差し支えはありません。
当然のこととして、こうした一連の流れも就業規則に記載しておくことが重要です。
この一連の流れを就業規則に書いておき、どんなケースでも一定の流れの中で判断していくことが大切なのです。
そうしないと、ケースバイケースで流れがバラバラになり、その判断基準そのものが疑われます。
復職については、多くの会社でトラブルになっていることも現実です。
だからこそ、「就業規則への明確な記載」と「統一的な運用」が絶対的な条件として必要なのです。
精神疾患と仕事の問題はとてもナーバスであり、取扱いを間違えると周りの社員にも取引先にも大きな影響が出てしまいます。
精神疾患の社員を出さないように予防すること(残業削減、配置転換など)が大切ですが、精神的な弱さ強さは人によって違うため、同じ環境でも精神疾患になる人ならない人が出てしまうことも事実です。
今一度、社内を点検していただき、間違いのない組織運営をしていただきますよう、お願いいたします。