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パートタイム労働法の改正が27年4月に施行され、今年の10月から短時間労働者への社会保険の適用拡大が実施されます。
総務省統計局の「労働力調査」によると、非正規労働者数は年々増え続けており、今や企業経営、特に飲食業や小売業においては、パートタイマーやアルバイトはなくてはならない戦力になっています。
国の方針としても、パートタイム労働者の公正な待遇を確保し、納得して働くことができるようにするために様々な施策を行っています。
今回は、平成27年4月1日に施行されたパートタイム労働法の改正と平成28年10月から施行される短時間労働者に対する厚生年金、健康保険の適用拡大についてみていきたいと思います。
パートタイム労働法での「短時間労働者」とは、1週間の所定労働時間が通常の労働者の1週間の所定労働時間と比べて短い労働者のことをいいます。
『所定労働時間が短いということの判断をどのようにすれば良いのだろうか?』と疑問に思うかもしれません。
パートタイム労働法では、1週間の労働時間について、明確な基準が定められているわけではありません。
正社員と比べて少しでも所定労働時間が短かかったり、所定労働日数が少なければ「短時間労働者」になりますので、「契約社員」「パートタイマー」「アルバイト」「嘱託」「臨時社員」「準社員」など、社内での呼び方に関係なく、上記の条件に当てはまればパートタイム労働法の対象となります。
反対に、フルタイムで働く人は時給制であったり、社内で「パート」と呼ばれていても、パートタイム労働法の対象にはなりません。
ただし、経営者はこのような人についても、法律の趣旨を考慮しなければならないことになっています。
平成27年4月1日から施行されたパートタイム労働法で、特に経営者が注意をしなければならない点を紹介していきます。
有期労働契約を締結しているパートタイム労働者でも、職務の内容、人材活用の仕組みが正社員と同じ場合には、正社員との差別的取扱いが禁止されます。
法改正後は、(1)と(2)に該当すれば、賃金、教育訓練、福利厚生施設の利用等すべての待遇について、正社員との差別的取扱いが禁止されることになります。
例えば、(1)と(2)に該当するパートタイム労働者には、正社員に対してだけ支給していた住宅手当の支給対象にせざるを得ないことも考えられます。
法改正後に、パートタイム労働者を雇い入れた時は、実施する雇用管理の改善措置の内容を事業主が説明する必要があります。
単純に「雇用管理の改善内容」と言われても良くわからないかもしれません。
厚生労働省では雇用管理の改善内容について具体的な内容を発表していますので紹介します。
昨今では、インターネットやソーシャルメディアの発達によってごまかしのきかない世の中になっています。
パートタイム労働者から求められたときに、会社に誠意が感じられなかったり、合理的な説明ができないと、すぐに会社の悪い噂は広まってしまいます。
信頼関係を損なうことがないように担当者は注意をしていく必要があります。
平成28年10月より短時間労働者へ社会保険の適用が拡大されることになりました。
改正の目的は、労働者でありながら被用者保険(主として厚生年金保険)の恩恵を受けられない非正規労働者に社会保険を適用して、セーフティネットを強化することです。
つまり、社会保険における正規社員と非正規社員の「格差を是正」することをねらっています。
ただし、当面の間、従業員数が501人以上の企業の労働者だけが対象になります。
また、学生は上記の要件を満たしていても、適用対象外になります。
パートタイム労働者を巡る法改正は、これからもひんぱんに行われていくと考えられますので、パートタイム労働者を雇用している経営者や担当者は法改正情報にアンテナを張っていく必要があります。
また、社会保険の適用拡大によって保険料の会社負担が増えることになります。
特にパートタイム労働者が主戦力となっている企業では大きな負担になります。
パートタイマーの中には、「社会保険に入りたくないから時間数を減らしたい」と考える人も出てくるでしょうし、最近ではパートタイム労働者の採用も「売り手市場」になっているようです。
平成28年10月の法改正後を見据えて「現在のままなら社会保険料がどのくらい増えるのか」「パートタイマーの人数を増員することが可能なのか」などを今から考えていく必要があるでしょう。
今回は501人以上の企業が対象となりますが、近い将来(平成31年4月)必ず全企業に対象が拡大されると思われますので、先を見据えた対策の立案をお考えください。