社労士小垂のコラム (No.5)

No.5 2013年5月24日

社会保険の加入逃れは厳しく罰せられます

マイナンバー法案が今国会で成立する公算が大きくなってきましたが、この法案が成立すると2016年1月からすべての国民に個人番号が付与され、個人を監視する体制が強化されることになります。

毎年、GWが終わり、春から夏にかけての過ごしやすい季節となるこの時期に、年金事務所の調査も多数行われます。
この年金事務所の調査の主な内容は「社会保険料が正しく支払われているか?」ということです。

この調査は年金事務所内で行われることがほとんどで、会社に出向いて行われることはあまりありませんが、調査に際して、年金事務所に持参する書類は沢山あります。
例えば、労働者名簿、雇用契約書、源泉所得税の納付書(納付済みのもの)、源泉徴収簿、賃金台帳、給与明細の控え、出勤簿、タイムカード、社会保険の資格取得届、算定基礎届、月額変更届、賞与支払届の控え(調査日1年前から現在までのもの)、就業規則、賃金規程、労使協定などとなっております。

年金事務所はこれらの書類をチェックし、加入すべき者の加入漏れや保険料額が正しく徴収されているかなどをチェックするのですが、特に、詳しく調査されるのは「パート社員等の社会保険加入漏れ」です。
ご存じのように、パート社員等の社会保険の加入条件は、
  • 「2ヶ月以上の雇用期間があること」
  • 「1日、または、1週間の労働時間が正社員の概ね3/4以上であること」
  • 「1ヶ月の労働日数が正社員の概ね3/4以上であること」
となっています。

この条件に該当する者は「パート」「アルバイト」であっても、社会保険に加入させないといけないのですが、社会保険料は会社と本人の折半による負担のため、「手取り金額が少なくなってしまうので加入したくない。」という理由で加入を拒み、「加入するなら、退職します。」という場合もあります。

こういう状況はパート・アルバイト等に限らず正社員でも起こる場合があり、「これでは雇用の確保ができず、業務の遂行に支障が出る。」ということで一部の社員、パート社員等が社会保険に加入していないケースはよくあることです。
この場合、年金事務所に指摘されると、多くの社長様が「従業員が拒んだから、加入させられなかった。」と主張されますが、これは通用しないのです。

社会保険加入の義務は会社にあるので、本人の要望に関わらず、労働時間などの条件を満たしたら、加入は絶対的な義務なのです。
そして、これに違反すると「6ヶ月以上の懲役、または、50万円以下の罰金」と法律で定められています。

過去の判例では、社員が退職後に裁判を起こし、損害賠償を請求しており、裁判所は「加入義務があるのに加入させなかったことは違法」として、損害賠償の支払いを認めています。
ですから、「社員が退職したから関係ない。」とはいえないですし、結果として、社員が望む望まないに関わらず、また、従業員が加入しないことに同意していたとしても、法律違反を問われてしまうのです。
また、「同業他社等でも未加入の会社が多い。」として加入しない会社も見受けられますが、同業他社の状況や一般的な状況は関係なく、違法は違法として処罰されてしまいます。

確かに現実には、パート社員等を加入させていない会社は多いので、パート社員の加入状況は重点的に調査されますし、条件に該当する社員がいれば「必ず加入させて下さい。」と指摘されるのです。

ただし、パート社員等の社会保険加入で判断に困る例があります。
それは、入社当初は社会保険の加入要件を満たしておらず、その後、勤務時間が増加して条件を満たすようになった場合です。

この場合は、勤務時間が増加したことが一時的なものなのか、恒常的なものなのかを検証する必要があります。
一時的な増加なら加入させる必要はありませんが、それが長く続くようになると「恒常的」と判断されてしまいます。
この理由によって、加入が義務であるかどうかの判断が変わってきますので、ここはしっかり押さえておきましょう。

年金事務所の調査については、今後厳しくなると予想されます。
確かに、数年前まではハローワークと年金事務所という縦割行政のため、社会保険には加入せず、雇用保険には加入する会社が多くても、連携してチェックすることが無く、社会保険加入に対して厳しいことは言われませんでした。
しかし、最近では新設法人に関してハローワークと連携して、労働保険と社会保険の加入状況をチェックしたり、年金事務所が社会保険未加入の会社をピックアップ調査し、加入を促す動きをしている地域が多数あるようになってきております。

さらに冒頭でお知らせしたように、「マイナンバー法案」が成立することが確実となってきますと、「納税実績」「年金などの社会保障」の情報を一元管理する事が可能となります。

この法案が動き出すのは遠い未来の話ではありませんので、具体的に「調査が厳しくなる → 加入させられる」となった段階で、慌てふためいていては遅いのです。
なぜならば、
1、未加入の社員、パート社員などを全員加入させる
2、加入させられるなら、退職する社員、パート社員が多数出る
3、業務に必要な人数の確保が難しくなる
4、手取りが加入前と同じになるように給与額を増額するしかない
という状況が想定されるからです。

多くの会社は予防医学的なリスク回避の道を歩むことができず、結果として、問題が大きくなってからご相談にいらっしゃるのですが、これでは健康に気をつかわない生活をしていて、大病を患ってから手術するのと同じことになってしまいます。

何ごとに対しても同じですが、事前の対策が重要なので、今一度、社会保険の加入等の社内の状況をご確認いただき、対策を実施してくださいますよう、よろしくお願いします。

タイトル一覧



評価制度・賃金制度づくり会社を守る就業規則セミナーサイトマップ
HOMEサイトマップお問い合わせ情報保護方針