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5S5Sでの生産性向上には限界がある
先日、ある会社の経営者の方とお話する機会がありました。その会社では、3年間5S活動を継続されているそうです。しかし「生産性が上がらないので辞めたらどうだ」という声が、役員の間から聞こえるようになってきた、とおっしゃっていました。
5Sをすれば探す手間が省ける、モノが取りやすくなる、不要物を買わなくなるのでコスト削減ができる。このようなムダ取り、生産性向上を目的として5Sに取り組む会社はたくさんあります。これらは事実であり、5S活動を実践する上での効果だと思います。
ただし留意していただきたいのは、5S活動でできるムダ取り、生産性向上には限界があるということです。
例えば工具置場を改善して、探す手間や手に取る手間が、1分削減されたとしましょう。1時間あたりの労務費が2,500円の会社だったとすると、削減効果は41円です。工具を手にとる作業は1日10回、それが操業日240日に渡ってあるとしても、コスト削減効果は年間で98,400円です。
このくらいの改善効果であれば、もっと違った観点から改善を検討するほうが効果があります。故障が多くて停止したり不良品を作ったりする設備を更新する。ある程度の在庫を容認し、平準化生産をする。コストに合わない工程は外作に切り替えるなどのほうが、もっと高い改善効果が期待できます。
さらに5Sによる生産性向上に限界があるのは、ネタがつきてしまうことにあります。
5Sはどちらかと言えば、置場や置き方、置く品目のチョイスなど、目に見えるものの改善が主体です。これらは5Sに取り組み始めた当初は、目につきやすいこともあり、簡単に改善ができます。
しかし目に見えるものには限りがありますし、そもそも本当に生産性に悪影響を与えているものは、作業プロセスであったり、従業員の力量であったり、経営資源の配分のバランスであったりと、見えないもののほうがたくさんあります。これらにメスを入れることは、5Sだけではふじゅうぶんです。
確かに5Sで生産性は上がります。しかしそれには限界があります。むしろ、5Sの本当の効果とは、当たり前のことを継続したり、決めたことを守り通す組織の土壌を作ることにあります。
例えば、生産性向上のために段取替え方法を会社として見直したとします。しかし、従業員がその新しい方法に対して「昔のほうがやりやすい」「新しいやり方は気に入らない」と言ってしまったらどうでしょう。どんなに正しい作業方法を示したとしても、現場で実行されなければ意味がありません。
生産性向上は5Sとは別の視点で考える。そして5Sは、そのように考えられたやり方を愚直にやり抜く組織の土壌を作るためにあると考えます。