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5S5Sで組織が変わる理由を、理論から考える (5)フット・イン・ザ・ドア・テクニック
経営理論と関連付けて、「なぜ5Sをすると組織が変わるのか」を説明する5回目です。
今回は「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」について取り上げます。
「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」というのは、長ったらしい横文字で覚えにくいですね。
これは、アメリカのフリードマンとフレイザーという心理学者が実験して検証した、人の心の動きのことです。人は、小さな要求を一度受け入れてしまうと、大きな要求も断りづらくなるという傾向のことを言います。
身近な例で言うと、スーパーで試食をしてしまうと、なんとなく買わなきゃいけないような気持ちになる、というあれです。
試食という形で、その商品を一旦受け入れてしまうと、売り子さんから勧められた時に、自分の心の一貫性を保ちたくなるのです。「試食をしたという事は興味があるんでしょ?興味があるんなら、買うのが筋だよね!」と、声なき声が心の中で聞こえるのです。
「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」という名前は、訪問販売員が開いたドアの間に足を入れ、話だけでも聞いてほしいという小さな要求を足がかりに販売成功に持っていくという話に由来する、とWikipediaには書いていました。
5S活動というのは、ここでいう「小さな要求」が多数集められたものと言えます。
例えば、このパンチャーとセロテープはこの場所に置く、というルールが5Sで決められていたとします。このくらいなら、守ることは大変なことではありません。
おそらくほとんどの人が、使った後にここに戻すことができるでしょう。「置場を守る」という、会社における小さな要求を受け入れるのです。そうすると、他の会社の決まりごとも守らなければならないと感じるのです。
パンチャーやセロテープについての決まりごとは守っているのに、その他の決まりごとは守っていないという状態は、自分の中では一貫性が保てないのです。
こうして、もっと大きな要求(例えば作業手順を守ることや、服務規程を守ること等)も受け入れてしまいたくなる気持ちが養われるのです。