シニアブレーン 活用事例
生産管理をしたいA社の場合
A社のプロフィール
創業: |
1931年 |
業種: |
製造業(天然水、清涼飲料水等の製造およびボトリング) |
従業員数: |
250名(うち、パート・アルバイトが100名) |
主な取引先: |
大手飲料メーカー(OEMとして)、地域の小売店 |
猛暑や消費者の好みの多様化により、現場が混乱するA社
A社は、提携している大手飲料メーカーの商品を主に生産している飲料メーカーである。
最近では、地域の特産品である果実を使った清涼飲料水や、名水を使った天然水の製造なども手がけており、品質と商品の開発力には大きな定評がある。
飲料メーカーの繁忙期は夏場である。ここ数年、最高気温が38度近くにまで上がる猛暑の影響もあり、繁忙期の売上と生産高は毎年のように増加している。
しかしながら、A社にとっては手放しで喜べる状況ではない。というのも、飲料メーカーは繁閑の差が大きく、繁忙期の作業の多くはパートやアルバイト等の非正規社員の手によるところが大きいからだ。
A社は夏場にパート・アルバイトを大勢投入し、目視検査や箱詰め等の作業を行なっている。
それだけならまだしも、消費者の好みの多様化によって、取り扱う商品の品揃えが増えてきた。
最近では防災用の飲料水が脚光を浴びるなど、「保存」という用途での需要も多い。
生産品目が増えている上に、度重なる猛暑で需要が大幅に伸びると、経営上も大きな問題が表面化するようになった。
具体的には人が増え、残業をすることで人件費が増加することはもちろん、設備の連続運転による機械の故障、作業に不慣れな人材の投入による検品時の不良品見逃しなどが大幅に増加する。本来の生産能力を大幅に超えて操業することから、突発的な受注には対応ができず、結果的に機会損失を招くことも多かった。
戦場のような夏場とは異なり、秋から冬にかけては閑散期になる。この時には設備の稼働率は大きく下がり、人手も不要になる。この時期にパート・アルバイトは減るものの、作業者兼パート・アルバイトの監督者でもある正社員を減らすわけにはいかず、社員も設備も手待ちの状態である。
このように、繁閑の差が大きいA社において、標準化生産を導入することを提案した。
しかしこれまで、需要がある時に必要なだけ生産すれば事足りていたA社にとっては、生産のあり方を大きく見直すだけの知識や経験を持つ人材はいなかった。
もちろん私たちクリエイションは、標準化生産の概念を教えることはできるが、実際に毎月の人員計画や日々の生産計画を立てたり、計画と実績の差を分析したり、ボトルネックとなる工程を見つけて改善計画を立てたりなど、毎日に渡る細かい作業までをサポートすることは難しい。
そこで私たちクリエイションは、A社の社長にシニアブレーンの活用を提案した。
シニアブレーンによる事前診断
私たちクリエイションは、A社の社長および幹部に、シニアブレーンとしてBさんを引きあわせた。
Bさんは大手の電機メーカーで課長として、生産管理を任されていた。前職を定年退職する間際には、新たに建設をした海外工場の生産管理部門の立ち上げにも従事した経験があった。
Bさんはさっそく、A社の幹部とのヒアリングやA社の製造現場の巡回を行った。
いくつかの資料の提供を受けた後、平準化生産を実施した場合の生産高、設備稼働率、人員数、そして収益の改善額等について、概算を計算した。
計算結果については、最初のヒアリングからおよそ2週間後に、A社の社長と幹部に対してプレゼンテーションを行った。具体的な数値を見たA社の社長と幹部は、当社で平準化生産を実行する意義と効果をじゅうぶんに感じることができ、その場ですぐに、Bさんによる改善支援が正式に決定した。
日々の役割について
A社との正式な契約後、Bさんは週に3回の頻度でA社へと通っている。
当初は、概算で見立てた生産計画の精度を上げるとともに、より短期的なスパンでの計画(月度計画)に落としこむ支援を行った。A社では、各種データがじゅうぶんに記録されていなかったり、全社的に情報を一元管理できているわけではなく、管理職一人ひとりで情報を抱えていることもあり、入手可能な記録や、現場の管理職からのヒアリングに時間を費やすことが多かった。
以下は、ある日のBさんの支援内容である。
時間 |
内容 |
9:00~ |
経理部から入手した資料の整理 |
11:00~ |
生産1課課長との打ち合わせ |
12:00~ |
昼休み |
13:00~ |
打ち合わせ内容と経理資料に基づく、次月度生産計画表の作成 |
16:00~ |
現場視察 |
17:00 |
A社を出る |
計画の作成にはずいぶんと骨を折ったBさんであったが、ある程度の計画が完成した後は、生産計画と実績の差異分析を中心に支援を行なっている。
A社の生産管理課長を育てる
ところでA社には、生産管理課長という役職のCさんがいた。
生産計画課という名称はあるものの、実際のところは資材の手配や管理が中心で、生産性を向上させるための取り組みを行ったことはなかった。したがって、Cさんにも生産管理に関する知識や経験はほとんどない。
このCさんと、シニアブレーンであるBさんは、必ず一緒になって計画立案や差異分析を実施している。A社にとっても、クリエイションにとっても、シニアブレーンであるBさんがいつまでも生産性改善を主導することは本意ではないからだ。
Bさんが改善に取り組み、平準化生産が実現できたとしても、その経験とノウハウがA社に蓄積をされなければ、問題はまた再発してしまう。再発した時に自力で解決ができなければ、本当の意味でA社の生産性が改善されたとは言えない。
そのような理由から、CさんはBさんと一緒になって改善に取り組んでいる。Bさんが出勤をしない日には、データを整理し、Bさんからのアドバイスを仰ぎながら、自分でも資料の作成に取り組んでいる。
Bさんのシニアブレーンとしての契約は半年間である。この半年間で、Bさんの持つ生産管理のノウハウを、Cさんが身に付ける。
そのような教育も、シニアブレーンの主な取り組みの一つである。